4月8日付
「小」の話

小さいこともいいことだ!

小盛メニューに隠されたヒント
小さい歯車でも“心は雄大”に


 随分以前ですが、 「大きいことはいいことだ」 というコマーシャルが人気を集めました。 確かに、 おおらかな感じのコマーシャルに思わずほほえんだことを覚えています。 でも、 今日のテーマは、 「小さいこともいいことだ!」 です。
 市町村合併のような大きな話ではありません。 『食』 という身近ではありますが、 僕にとっては最も関心のあるテーマからお話したいと思います。 最近、 近所のレストランが“小盛”のメニューを始めました。 これは結構うれしいサービスです。 食べもの屋さんに行って、 これが食べたい、 でも、 食べきれずに残しては申し訳ないとか、 お腹の脂肪が気になるとか、 で注文をあきらめた経験はありませんか。
 自分の場合、 年とともに食事量も酒量も落ちてきており、 もったいないと思いつつ残すことが多いし、 つい無理をするとそれなりの報いがやってきます。 “ちょこっとおいしいものを食いたい”と思うことが増えてきました。
 ここまで読まれてムッとされている方々も少なくないと思います。 山梨流の歓迎には食卓いっぱいのご馳走(ちそう)が定番です。 山梨に限りません。 研修のためスイスに1カ月ほど滞在した折には、 整腸剤が一瓶なくなりました。 それはそれで、 大変うれしくありがたいことです。 おいしいものをたくさん食べられるし、 何よりも暖かい気持ちが伝わってきます。 誠に勝手な言い分ではありますが、 ぜひこの伝統は続けていただきたい。
 ただ、 商売としての 「食」を考えると、“増量”が幅を利かせ過ぎている感じがしますし、 旅館の豪華絢爛(けんらん)さも 「ちょっと度が過ぎている」 と感じる客がいることも事実です。 客のニーズに全て応えていては、 作る側の手間やコストが限度を超えるとは思いますが、 高齢化といった状況の変化も踏まえつつ、 TPOの組み合わせで、 選べる幅が広がるとありがたいなと思いますし、 これまで遠慮していたお客さんを取り込めるかもしれません。
 さて、 今は4月。 新社会人をはじめ期待に胸を膨らませておられる方々も多いと思います。 夢が大きいほど自分が小さく思えることもあると思います。 居酒屋でよく耳にする言葉に 「自分は歯車の一つ」 というものがあります。 大体、 自嘲気味に語られているのですが、 僕は結構好きな言葉です。 組織の中、 言い換えれば、 内向きの視点で捉えると確かに寂しい気分になりますが、 会社を社会に置き換えて、“人と人がしっかりかみ合ってはじめて世の中がうまく回る”と考えることが一人ひとりにとっても大事ではないかと思います。
 若いときは 「小さい歯車」 と嘆いていたのに、 年を取り偉くなると歯車であることを忘れてしまう、 ということがないようにしたいですね。 どうか小さくてもキラッと光る“歯車”になってください。
 そのためには、 縮こまっていてはダメ。 「雄大さ」 も大事です。 雄大さは自然ばかりではありません。 物理的な贅沢(ぜいたく)や名声には限度がありますが、 心の雄大さに限度はありません。 誰もが本人次第で無限に広げられます。
 また、 世の中にはルールやしがらみも必要ではありますが、 心は全く自由です。 そして、 その積み重ねは顔に出ます。 鏡を見て、 時に自分が嫌になり自省しています。 くれぐれも、 モノで見栄を張って心の狭い人にはならないで、 山梨の自然のような雄大さと暖かさを持ち続けてください。



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