5月13日付
中心街の在り方

街の真ん中に老人特区を

「個」 重視した“第4コーナー”モデル
コンドミニアム建設と医療の連携


 最近、同世代の仲間と話していると、必ずといっていいくらい話題になるのが、親のケアの問題です。母親と同居している先輩、遠い郷里で母親が一人暮らしをしている後輩など。自分も70歳代後半の母親が二人、決して他人事ではない話です。
 置かれた状況は異なるので、取り組み方もさまざまです。先日聞いた友人の場合は、ご両親の希望を尊重して、海に面した高台の風光明媚 (めいび) な介護付有料老人ホームに入居を決めました。ご両親は満足、息子も入居費は高かったもののひと安心だったのですが、しばらくして、ご両親の悩みを聞くための老人ホーム通いが始まりました。
 人生の“第4コーナー”をどう過ごすかというテーマは、親だけではなく自分自身の課題でもあります。個人的には、子供との同居は自宅の狭さからも無理なので、いずれ夫婦で老人ホームへ入ろうかなと考えていますが、現実にそういった施設のパンフレットをみていると、残念ながら 「ここに入りたい」 という先が見当たりません。
 まず、『個』 が大切にされていないということです。一定のルールの下での集団生活が効率的運営 (=低いコスト) にプラスなのは分かりますが、人生のベテランを遇するという視点も必要です。何十年も人間をやってくれば、人それぞれに譲れない部分があると思います。それを抑え込み過ぎても幸せを感じられないのではないかなというのが実感です。その意味で、自分ひとりになれる 『場』 が大切であると思います。
 また、老人ホームは風光明媚な場所がいいと誰が決めたのでしょうか。そういう場所は大体交通の便が悪いところです。衰えてくれば自動車の運転もできなくなり、時々バスに乗せてもらう以外は隔絶した世界です。その中で、美しい風景と散策だけでは満足にも限界があるし、人間関係のもやもやを晴らす逃げ場もなければストレスもたまります。
 前置きが長くなりましたが、ここで本日の提案は、「街の真ん中に老人特区を作りませんか」 ということです。「また無責任なことを」 という声が聞こえてきそうですが、いずれ入居するかもしれない一個人の希望として聞いてください。
 根っこから新しい町を作るのではありません。今のままで、駐車場など空いている場所にバリアフリーかつ個人の要望を取り入れたさまざまなコンドミニアムを順々に作り、県内外の老人に集まってもらう。そのためには、その地域のお医者さんにはホームドクターとして往診もしていただくし、総合病院とも連携を取ってもらい、本格的なケアが必要になったときは、特区の介護老人施設に入れるようにする。また、商店には御用聞きもしてもらうし、若くて商売したいが金がない人達を優遇し、そこに住んでもらう。さらに、行き場がないと気力も落ちる方々が多いと思うので、空きビルを借りて、個人の事務所をたくさん作る (事務所といっても机と電話とパソコンがあれば十分)。
 ざっとこんなコンセプトです。先程申し上げた 『個』 が大切にされます。また、自動車がなくても街中に出れば気分は晴れます。お城も整備されてきたし、仲間も子供も近くにいます。また、濡れ落ち葉にならず元気でいるためには、「行ってきます」 と 「ただいま」 が結構大事と思いますが、これもOK。
 問題は、多分、誰がリードするのかとお金です。金持ちだけが集まっても意味がないというか僕が入れません。お金に関しては、“無尽”の気持ちが必要になるし、誰がという問題に関しては、民も官も一体となるしかありません。多分、不動産関係の方々の知恵が不可欠ですし、調整には官の力が大切です。
 もう一つ肝心なことは、この提案は、地価の問題などから東京では不可能であることです。幸せな人生の“第4コーナー”モデルを発信できるのは地方です。



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