8月12日付
9・11総選挙

国民不在の構造に風穴開けよう

説明責任放棄した“改革論議”
サービス精神欠如した行政


 とうとう小泉政治の幕が降りたようだ。着任当初は貴乃花の優勝に「感動した」と叫ぶような思いがけない発想で大衆的人気を集めていたが、次第に「変人」の馬脚をあらわし、最後は一枚看板の郵政民営化改革で自爆してしまった。
 この郵政民営化というのは、金融と物流にまたがる分かりにくい問題だ。これだけ抵抗勢力が猛反対するのだから、利権も少なくないのだろう。郵便貯金という巨大資金の透明化、公務員削減という課題もある。
 しかし、庶民感覚からすると、敷居の高い銀行よりは郵便局の窓口は親しみがあるし、山奥の早川町に郵便局がなくなったら困るだろうと思う。小泉純一郎首相は参議院の審議ではひとまずは現状の維持をいいながら、その後の見直しにもさりげなくふれていた。
 これまでの小泉改革は市場原理で淘汰 (とうた) を図ることを基調としてきたから、いずれ不採算の郵便局は整理という段階が透けて見える。
 こうした分かりにくい改革を国民に対して丁寧に説明することを小泉首相はしてこなかった。この人は自分の年金歴に関連して、「人生いろいろ、会社もいろいろ」とはぐらかし、靖国問題では何をどう聞かれても「適切に判断します」と答を拒否し続けた。要するに、いま政治家に求められる最大の責任である説明責任を一切放棄してきたということだ。これは「変人」だからといって許されることではない。
 もっとも、自民党内の反対派もほめられたものではない。支持基盤への配慮はあっても、なぜこの改革案では駄目なのかという説明を尽くしたとは思えない。むしろ、彼らの言う「政局」に右往左往するのに懸命だった。被害を受けたのは雇用や年金という、より緊急度の高い課題をほったらかしにされた我々国民だ。
 さて、説明責任といえば、県内行政でも「サービス精神」の不足を痛感したことがある。
 賛否の議論が絶えない北部環状道路の環境アセスメント手続きの重要な段階の一つである方法書の縦覧(公開)が7月11日から1カ月間行われた。「方法書」というのは、環境アセスをどのような項目について、どんな手法でやるのかという提案で、これについて縦覧が行われ、住民や専門家の意見を集めてよりよい調査にしようという手続きだ。
 まず、この縦覧が行われていることが分からない。知人から教えられてようやく知ったのだが、山梨県のホームページ(HP)で調べても、すぐには情報が出てこない。森林環境部の項目に「山梨の環境アセスメント」というコーナーはあるのだが、そこには「現在公告・縦覧などの手続を行っている事業はありません」とある。おかしいと思って更新日をみると、5月25日。土木部都市計画課のHPでようやく概要がわかったが、このあたりは部局間の連携をよくしてほしいものだ。
 縦覧をしている県民情報プラザでもこちらから聞かなければ場所が分からないし、ようやくたどり着いた「方法書」が想像していたよりはるかに簡略で、大まかなことしか書いてない。
 環境法を講義する中で、環境アセスメントの重要性を説いているのだが、初体験の「方法書」からはサービス精神を感じることができなかった。
 「サービス精神」といえば、固定資産税関連でもその不足を感じたことがある。
 少し前に家の隣接地を購入して、やがてその土地の固定資産税納付通知が来た。私は行政法の専門だから、条件によってこの税の減免制度があることを知っていたので、甲府市の資産税課に電話して事情を話し、調査の結果、減税になった。
 しかし、この制度を知らない人が当然ながら多く、十数年前に全国的に払いすぎ問題が話題になって、多くの自治体では納付通知にこの制度の解説を添えている。しかし、甲府市では何の説明もない。おそらく、知らずに損をしている人も少なくないと思う。これも解説をつけるのが当然ではないだろうか。
 「国民は主権者、行政はサービス」と口では言うが、政治家も行政職員も自分たちの都合しか考えていない。こんなことでいいのか。9月11日はこの構造に風穴を開ける選挙にしたいものだ。



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