9月2日付
人材誘致政策

団塊世代のマンパワー呼び込め

人口減が招く地方都市の疲弊
定年組の技術力と腕の活用を


 7月15日「経済財政白書」が発表された。今年の白書は、第1章・景気回復の長期化を目指す日本経済、第2章・官から民へ−政府部門の再構築とその課題−、第3章・「人口の波」と経済構造の変化、という3部構成になっている。
 「経済白書」は、1947年 (昭和22年) にはじまり、2001年 (平成13年) から「経済財政白書」に衣替えして今年は5年目になる。
 白書の歴史を紐解 (ひもと) いてみると、毎回、副題がつけられている。例えば、1954年 (昭和29年) には「地固めの時」とあり、「もはや戦後ではない…」で有名になった56年 (昭和31年) には「日本経済の成長と近代化」という副題がつけられている。
 65年 (昭和40年) になると「安定成長への課題」となり、貿易摩擦が深刻化してきた80年 (昭和55年) には「先進国日本の試練」とある。そして、バブル経済が崩壊した後の93年 (平成5年) は「バブルの教訓と新たな発展への課題」、最後の「経済白書」の副題は「新しい世の中が始まる」であった。
 「経済財政白書」となった最初の副題は「改革なくして成長なし」、以後5回目の今年の副題も「改革なくして成長なし」のままである。果たして改革はどこまで進んだのだろうか。
 さて、今年の白書は人口減少が経済構造に及ぼす影響について分析している。これまでのように人口が増え、経済も右肩上がりで拡大するという常識は根本的に変えなければならない。人口推計によると、2006年をピークに死亡数が出生数を上回り総人口は減少をはじめるが、人口減少の速度は予想以上に速そうである。このままでいくと2030年ごろには現在の東京の人口に匹敵するおよそ1200万人が減少すると思われる。
 そうした中で8月13日、国交省は全国に85ある都市圏の2030年時点における人口予測を発表している。それによると、東京や札幌、仙台、京都、福岡などの大都市圏の人口は減少せず若干増える見通しである。一方、それらの大都市圏を除いた74の都市圏の人口は減少し、特に、室蘭、石巻、会津若松、鶴岡、八代などの15都市圏では2割を超す減少となる。甲府市をはじめ山梨県内の諸都市においても1割程度、県全体では9万人程度の減少を覚悟しなければならないのではないか。
 もう一つ、先般発表された相続税の基準となる路線価を見ると、東京の地価は上昇に転じたものの、秋田、富山、長崎、石川、鳥取、長野、栃木、山梨、香川、福井などでは地価下落に歯止めが掛からず、甲府駅前の下落率は25%と県庁所在地で最大となった。
 人口が減少すると、消費の低迷、住宅需要の低下、地価の下落、医療・介護負担の増加などが予想され次第に都市が疲弊していくという構図が見えてくる。空き店舗や空きビルなどが目立つようになり“シャッター通り化”していく危険性が高く、何らかの手を打たなければならない。
 各地で中心市街地の活性化が叫ばれ、甲府市でも「桜座」復活や映画を起爆剤としたまちづくりへの動き、マンションの都心回帰などが見られるが、「2007年問題」といわれる「団塊の世代」に着目したらどうだろうか。
 日本の経済社会をリードしてきた「団塊の世代」およそ1000万人が2007年から次々と定年を迎える。
 東京都が行った調査によると、その大半が定年後も仕事を続ける意欲を持っている。しかもシルバーベンチャーや個人事業を興すことを希望している。
 すでに伊豆方面ではリタイアした一流シェフが地元の食材を生かした小さなレストランを開店している。また、数人の技術者が集まって開発型のベンチャー企業を立ち上げるといったケースもある。
 これまで地方は「企業誘致」に力を入れてきたために、とかくメーカーやショッピングセンターを誘致したいと考えがちである。しかし、三重県の液晶メーカー・シャープの誘致のようなケースはまれであり、大型店も淘汰 (とうた) の時代に入っている。二匹目のドジョウはそう簡単には見つからない。
 むしろ「団塊の世代」の技術力と腕の誘致、つまり「人材誘致政策」を掲げ、リタイアメントする人材が定着できるような受け皿づくりを急ぐべきではないだろうか。



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