12月9日付
地方の自立

地方間競争に、山梨は勝てますか?

「人、風景、歴史」 の融合目指せ
官と民繋ぐ 「公」 の役割重要に


 今年もいろいろありました。医療や年金をはじめ将来の不安が解消された訳ではありませんし、経済を中心にメリハリが強まっている状況の下、厳しさを実感されている方々も少なくないと思います。
 でも、あえて申し上げれば、“おっとどっこい日本もいける”と感じられる芽のようなものが、久方ぶりに出てきた年でもあった気がしています。良くも悪くも“伝統社会”に揺さぶりがかかっています。変化は混沌 (こんとん) を招きます。気持ちが不安定化することもあります。では、「昔はよかった」 のでしょうか。
 個人的な記憶では、昔にも苦しいことはありました。今の方がよくなった面も結構あります。例えば、日本ではごく普通の生活が世界を見渡せば100人に1人の恵まれた生活であることとか、災害時の対応 (他国と比べても格段にいい) とか。要は、節度と思いやりのうえに、公平と安心を築いていくということではないでしょうか。
 余り気楽に考えてはいけませんが、ギリギリと議論を煮詰めてしまっても楽しいことは無いように思います。生きていくということは、偶然の積み重ねであり、それをどう受け止めるのか次第で、生きている意味すら変わってきます。
 僕の場合は、たまたま山梨勤務となったことが、その後の人生を大きく変えました。多くの友人を得られ、第二の故郷のように感じています。人生は面白い。
 さて、いよいよ動き出した“官から民”ですが、郵政や政府系金融機関に関しては、ちょっと他人事のように考えておられる方も少なくないのではありませんか。でも、この“官から民”の流れの本質は、“自分でできることは自分でやる”という 『自立』 です。これまでのような政府任せの甘えは許されなくなります。もちろん政府がやるべき施策は継続されますが、ぜひ必要なものに絞り込まれていくと思います。
 そして、並行的に 『地方の自立』 が進みます。響きのいい言葉ですが、実際はかなり大変です。限られた財政の中で、何を優先するのか。お隣の顔が見えるだけに調整は苦労です。
 また、わが国の社会経済構造を考えると、東京との競争と言うよりは、“地方同士の競争”です。行ってみたい街、住んでみたい地域には人や金が集まり、魅力がないと寂れます。既にこの競争は始まっています。なんとしても山梨は勝ち抜きましょう。
  「山梨で自慢できるのは自然だけ」 などと斜に構えている場合ではありません。山と川なら日本中にあります。訪れる人の心をくすぐるのは、人と人との繋 (つな) がりであると思います。皆さんの一人ひとりがプランナーであり実行者です。人と風景・歴史が合わされば山梨は強い。
 ところで、「山梨ビジターズ・ネット通信」 をご存知ですか。山梨県観光物産連盟が発行しているインターネット通信です。毎回楽しんでいますが、先日、臨時号で 「私の出逢った山梨のおもてなし」 「私の好きな山梨の県産品」 「旅の絵葉書」 の3つのコンテストをやっていました。思わず自分はどうかなと考えてしまいましたが、山梨を訪れた人達の感動を掴 (つか) むのに格好の企画だなと感心しました。
 地元の方が思っても見なかったことに、お客さんは感動しているかもしれません。また、今や観光の定番になったバスツアー。東京の近くでも、山梨、千葉、栃木など、まさに地域同士の競争です。それぞれ貪欲 (どんよく) ともいえる内容で競っています。もっとゆとりの旅、ひいては移り住ませることまで視野に入れて、山梨の色を作り打ち出していくことが大切です。
 さらに欲を言えば、その際、純粋な官でも民でもない、いわば、双方を繋ぐ 『公』 の役割が一つのポイントになる気がします。若い人達やリタイアした方々の活躍が期待される分野です。
 今年も大変お世話になりました。心から御礼申し上げます。
 どうぞ、良いお年をお迎えください。




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