11月5日付
地球温暖化

通り一遍だった県の温暖化対策

自販機半減打ち出した長野
本気で現状一新する計画を


 最近、将来に不安を覚えるようなことが続いている。
 石油価格の高騰が始まった。21世紀はエネルギー不安が顕著になる時代と予測されていたが、意外に早くその兆しが見えたように思う。イラク戦争は石油利権をめぐる争いだといわれるように、世界の石油資源は限界に近づきつつある。石油文明の終りが近づいていることは間違いない。
 先日の新潟県を震源とする地震にも驚かされた。阪神淡路大震災以来、日本列島周辺の地震の巣がにわかにさわがしくなっているような気配で、幸い、今のところ山梨で被害を起こすような地震はないものの、東海大地震が起きればかなりの被害は避けられない。また、山梨は本州を二分するフォッサマグナの上に位置しているから、直下型地震の危険にも注意していなければならない。
 そして、今年の気象の異常さには驚かされた。7月に甲府で記録した40.4度は、日本で史上2番目だそうだが、本当に猛暑の夏だった。これと台風の上陸数の新記録は、どこかでつながっているらしい。要するに、地球温暖化の影響が本格的に出はじめたということだ。
 地球が温暖化するというと、両極地方の氷が溶けて、海水面がじわじわと上昇するようなことを想像しがちだが、一方で猛暑、他方で冷夏、一方で大雨、他方で乾燥化というように、その影響の出方はかなり複雑になるらしい。昨年夏の日本は冷夏だったが、ヨーロッパは猛暑で、フランスの熱波による死者は1万5千人に達した。最近の台風でも観測史上最大の瞬間風速とか、強風圏が日本列島を包み込むような規模というように、確かに異常現象が起きている。
 今のところ地震は予知が難しく、これに対しては普段から被害を少なくする対応措置をするとか災害時の連携協力を強化しておくこと以外には方策がなさそうだ。
 これに対して、石油価格高騰や地球温暖化には打つべき手がある。化石燃料使用を少なくし、COの排出量を削減すればいいのだ。すでに国際的には気候変動枠組み条約が成立し、その実行案としての京都議定書も発効の日が近づいている。
 京都議定書では、日本はCO排出量を1990年レベルから6%削減する義務を負っている。日本はこれを履行するために、CO排出量に応じて税金をかける環境税を準備している。しかし、これだけでは十分ではない。日本の企業や国民全体が排出削減に向けて行動を起こす必要がある。そこで、具体的には各都道府県がこれを削減する計画をたてるよう求められている。
 山梨県は今年2月に 「地球温暖化対策推進計画」 を公表している。これは、かなり長文の計画で、策定にあたった関係者の労は多とするが、県民や事業者に生活スタイルの転換、省エネルギーや新エネルギー導入を呼びかけるといった、抽象的な内容で終始している。残念ながらこれではCO削減に大きな効果を発揮しそうにない。
 これに対して、昨年4月に発表された長野県の 「地球温暖化防止県民計画」 には、コンビニや郊外店の深夜営業を制限する、1基で民家1軒と同じ電力を消費する飲料自販機を半減する、県内全ての公立小中高校に太陽光発電やバイオマス暖房装置を導入するといった大胆な提言がなされている。
 これは民間人を主力とする研究会が作成した原案を県が採用したもので、それだけに官僚臭のない、清新な発想が外部でも評価されている。県内清涼飲料業界からは 「営業妨害」 の声もあったが、田中康夫知事は 「憲法論争も辞さない」 と原案を支持した。
 最近、長野県の意欲的な施策展開に比べて山梨の元気のなさが目立つが、ここでも両者の差は小さくない。地球温暖化が後の世代にとって極めて深刻な問題であるだけに、山梨県でも本気で現状を一新するような計画づくりを再度試みたらどうだろうか。
 県民にとっても他人事ではない。石油高騰を契機に、どうしたら自動車の使用を減らせるか、過剰な消費を避けられるかなど、日常生活を見直す努力をしたいものだ。





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