12月17日付
旅館・ホテル

地域 (エリア) でもてなす観光へ

「古きよき山梨」 と 「本物のメニュー」
真のリピーターとなる中高年夫婦


 今年もいろいろなことがありましたが、残りもわずかとなりました。年末年始には温泉へ繰り出す方々も多いのではないでしょうか。本日は、「旅館・ホテル」 をテーマに今年最後の直言ならぬ“放言”をお許しいただきたいと思います。
 先日、職場の仲間と旅行の話で盛り上がりました。中年のおじさんの 「シーズン中は宿泊代が高いうえにサービスは悪い。しかも渋滞は激しくうんざり」 を皮切りに 「豪華な夕食はいいが、食べきれないし、次の日も同じものが出てきた」「朝おはようございますとたたき起こすのはやめてくれ」と手厳しい話。また、若手・女性からは 「旅行代理店のチラシよりも、インターネットで調べ宿泊客のクチコミもチェックしたうえで選ぶ人が増えている」 という声。やや異色だったのが、フランスに4年ほど暮らしていた人の 「大方のフランス人はホテルではなく、家族でアパート (日本流にはコンドミニアムとか貸し別荘) を利用する。スキー場でも、カンヌやニースでも外見はホテルのようなアパートが一杯ある。50〜60平方mの広さで1週間7,800ユーロ (10万円位)」 という話もありました。
 旅行と温泉大好きな日本人の嗜好 (しこう) が大きく変わりつつある気がします。戦後の経済成長は、ご承知のとおり大量生産・大量消費の工業社会が軸でした。その下では、画一的に安いものを提供するのが正解であり、旅館・ホテル業界も同じスタイルであったと思います (護送船団方式は金融機関だけの特別なものではありません)。
 ここ数年、旅館・ホテルサイドの努力で、“是非もう一度行きたい旅館・ホテル”が増えてきているとは思いますが、全体としては、いまだ途 (みち) 半ばではないでしょうか。お客さんは、老若男女を問わず、“押し着せ”に我慢しなくなってきています。『自ら選べる』 ということが大きな要素ではないかという気がします。どういう旅行をしたいのか、あるいは、どのようなサービスを得られるのか、様々な場面で、お客さんが 『自分で選んだ』 気分にさせる工夫が必要な時代です。
 とは言ったものの、難しいですよね、これって。インターネット派がいる一方、チラシを眺めつつバスツアーに嵌 (はま) っている仲間もいます。
 引き続き旅行の主役は女性であると思いますが、最近の観光地には年配のご夫婦が確実に増えています。煩わしい子育てから解放され時間も自由になり、二人でじっくり楽しもうというパターンです (山梨でも夏の北岳小屋は中高年で一杯でした)。目は肥えているし、気持ちやサービスにも敏感です。手抜きやごまかし、見てくれだけでは通用しません。その代わり、本当のファンいわゆるリピーターを作れます。
 こういうお客さんを満足させるのは大変なことです。個々の対応では限界が出てきます。客を“地域 (エリア)”で受けることが必要ではないでしょうか。例えば、“温泉地”のインフラ (食事処、休憩処、酒処、遊技場…) で格差が出ると思います。個々の旅館は“寛 (くつろ) げる我が家”でいいのでは…。
 また、山梨の場合、東京の隣にもかかわらず、山、森、温泉など自然に恵まれ、果物、ワイン、日本酒の宝庫でもあります。何が物足りないかというと、一つは、古きよき山梨になかなか触れられないこと。 もう一つは、山梨らしい“本物”のメニューがないこと。この二つがあれば、個々の客のニーズに合わせた組み合わせがいくらでも作れますし、山梨の楽しみ方が教えられます。農家のおばあちゃんの手打ちそばとワイナリー見学で山梨ファンになった友人もいます。
 また、東京との連携も大切です。その関連でちょっと変わった話をひとつ。唐突ですが、パリなどフランスの都市部にはスキー休暇という制度があり、しかも地区別にズラして1週間ずつ学校が休みになるそうです。親としては、子供に学校を休ませてスキーに行くわけにはいかないけど、スキーには行きたいし、行くなら空いている方がいい、といういかにも生活の質を大切にするフランスらしい制度です (受けるほうも平準化されてハッピー)。「わが国では無理」 と思われる方が多いでしょう。でも、数年前に、ある自治体で、休暇をまとめて取れるように学校の休みを変更しようと検討したことがあると聞いています。
 官民そして観光する側・される側、手を携えて中身の濃いバカンスを目指しませんか。





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