2010年1月8日付
新政権への処方箋

首相辞すべし

まず国民生活の安全網回復
国家像と財政見直し示す


 新年初めての直言だから、明るい話題を書きたいところだが、残念ながら、不安材料が多い。
 昨年12月24日、鳩山由紀夫首相の元秘書二人が政治資金規正法違反で起訴された。新政権誕生から99日目というタイミングだった。
 同8月30日の総選挙で民主党中心の連立政権が誕生、1993年に短命で終わった細川政権以来の政権交代が実現した。
 しかも、今回は、国政史上初めて総選挙を通じての交代劇だった。
 昨年9月に本欄で書いた通り、これは民主党のマニフェストが国民から全面的に支持されたのではなく、基本的には、国民多数は自民党長期政権末期の余りのひどさに呆(あき)れたからこそ未知数の民主党に政権を委ねたのだ。
 だから、新政権の評価は、これから何を実現するかに懸かっていた。
 昨年9月16日に誕生した鳩山政権の歩み出しは好調だった。
 大臣、副大臣、政務官の政務三役中心の政治主導の演出、天下り禁止宣言、事業仕分けでの映像効果利用など、自民党時代の政治手法との違いを強く印象付けることに成功した。識者の評もまずまず好意的であった。
 ところが、最近になってもたつきが目立つ。自民党政権と新政権の政策の基本的特徴の違いは、前者が新自由主義を基調とする「小さな政府」志向であるのに対して、民主党マニフェストに表現されているのは、政府介入をやや大きくする「中型政府」志向の政策である。そのためには税収を増やして積極的財政運営に打って出なければならないのだが、経済の萎縮(いしゅく)で肝心の税収が少なくなった。新政権は従来の予算運用のムダ探しで財源を調達しようとしたが、期待したほどの額にはならなかった。
 予算不足となると自動車燃料の暫定税率廃止もやりにくいし、子ども手当の財源探しもきつい。
 財源がないならマニフェスト実現の一部は先延ばしせざるを得ないと国民に率直に謝ればいいのに、この方針決定に鳩山首相はもたもたと時間ばかりかけた。そして、最後は奥の院ならぬ幹事長室から小沢一郎氏が登場して「国民世論」という名目のご託宣が下った。
 もたもたは外交にも及んでいる。安保理と国連総会の演説を英語でこなし、オバマ大統領との初会見までは順調だったが、普天間基地移設問題では判断が右に左に揺れている。5月まで決断を先延ばしにしたが、クリントン国務長官は「そんな話聞いていないよ」という態度。相変わらず、要求することは声高に迫るという従来からの対日外交手法を見せている。
 そこで、新政権が信頼を回復する処方箋(しょほうせん)を示してみよう。
 第一に、鳩山首相はここまでぶざまな姿をさらした以上、首相の職を辞すべきだ。たしかに巨額の政治資金は汚れた金ではないかも知れない。だが、それを「知らなかった」という弁明は国民の常識を超える。「政治と金」の問題は首相のリーダーシップをますます危うくし、新政権の信頼感を損ねる。潔く首班の座を降りるべきだ。  第二に、マニフェストの全部の実現は現下の財政状態では無理だから、何が重点であるかを国民に説明し、なかでも旧政権下で破れた国民生活の安全網回復に力を入れること。経済回復はここから始まるはずだ。
 第三に、旧政権の新自由主義路線とどこが違うかを明確に示し、民主党が目指す国家像を明らかにすると共に、消費税の増税を含めた財政の将来見通しをきちんと示すこと。参院選にはマイナス効果が多少出るかも知れないが、これを明らかにしなければ、国民福祉優先という基本方針が信頼性を失う。
 最後に、対米交渉は急がないこと。どの国も外交戦略はしたたかで、日本のようにアメリカに言われると直ぐに恐れ入ってなどいない。国民世論が変わったのだから、当然、決定には時間がかかる。相手にとって日本は金づる、交渉決裂の可能性がないからだ。
 最近のもたつきの原因は必ずしも新政権だけの責任ではなく、積年の対米従属政策のツケやドバイ・ショックによる世界同時不況など、外部要因もある。総選挙で示された民意を背景に、気分を一新して、国民に希望を与える政権運営を望みたい。



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