2010年2月12日付
百年の計

インフラを学ぶ

消費者の立場で尻込みせず
山梨も森、水、光の供給県


 先日、テレビで「アメリカ倒壊の日」(米ヒストリーチャンネル社制作)という番組が放送されていました。その内容は、ダム、堤防、電気、下水道などのインフラがアメリカ全土で崩壊しつつあるというものです。
 主要なインフラが20世紀前半に造られており老朽化がかなり進んでいるようです。かなり力の入ったドキュメンタリーでしたが、それにしても直(す)ぐには信じられない事実です。そこで、番組でも取り上げられていた停電について、インターネットで調べたところ、ウィキペデイアでは、アメリカの2001〜02年における一般家庭の年間平均停電時間は73分、また、別のデータでは100分以上となっていました。毎年1時間以上停電していたら、わが国では大騒ぎになると思います。
 わが国はどうかというと、年間の停電時間は10分弱でした。統計の取り方で多少数字はぶれるかもしれませんが、わが国が先進国の中でもダントツに素晴らしい電力システムを持っていることは間違いありません。電気に対して高い品質を求める国民に応えるため、地道な努力を積み重ねてきた電力会社のおかげです。電力に限らず、鉄道、上下水道、さらに広い意味で、警察、消防などわが国のインフラは世界でも最高レベルです。でも、アメリカの事情を考えるまでもなく、インフラを維持していくのは大変なことです。たくさんの人の力に支えられています。
 その人達に共通しているのは仕事に「誇り」を持っていることではないでしょうか。山梨で知り合った方々もそうでした。休みの日も甲府の繁華街を私服で見回っている警察官とか、送電線の保守のために目も眩(くら)むような鉄塔に日々登っている人、患者である僕の方が体調を心配してしまうほど働く医師と看護師さん、皆さん給与を度外視して仕事をしていました。
 そのおかげで、われわれの快適な生活が成り立っているわけですが、自戒も込めて申し上げれば、普段はその有り難さを忘れて、サービスを受けることが当り前のように思っています。
 私見ですが、その背景の一つは仕事の分業化ではないかと思います。それによって現代社会は成長してきましたが、その結果、人と人との関係は金銭の受払いを通した無機質なものになっています。それぞれがやるべきことをやればいいという考え方もありますが、インフラという社会の基盤について、消費者であるわれわれも、話が大きすぎると尻込みせずに関心を持ち、知識を深める必要があるのではないでしょうか。
 何か不都合が起きる都度繰り返される被害者(消費者)対加害者(供給者)というステレオタイプの構図にはうんざりですし、現場の方々がやる気を失ってしまうのではと心配です。われわれも、どのようなインフラが望ましいかを子供達の時代まで展望しつつ考えることで、いい社会が維持されていく気がします。
 さらに、山梨はインフラの供給元でもあります。それは、県土の80%を占める森林と水、そして一年中降り注ぐ太陽の光です。信玄公の信玄堤、東京電力の前身である東京電燈の設立、さらに、藤村式洋風建築の学校群など先人達はこの分野で頑張っています。
 大規模なダムとか太陽光発電も大事ですが、森林や里山の整備など一人ひとりの思いが集まればできることもたくさんあると思います。
 街づくりも含めて、みんなで、百年の計を考えてみませんか。インフラを失ってからその大切さに気が付いても手遅れです。



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