「山梨新報」2017年5月19日掲載
茅ケ岳山麓の南側に位置する甲斐市団子新居では、約100万年前に茅ケ岳の噴火によって噴出した石が産出される。この石、外側が黄色、中が黒褐色。まるであんの入った団子のように見えることから「団子石」と呼ばれ、団子新居の地名の由来になったといわれる。また団子石をめぐる弘法大師の伝説も伝わっている。

甲斐市教委所有の団子石。
双葉歴史民俗資料館にも展示されている
団子石は、直径2cm前後の球状の火山性の石。全国でも産出され、「珍石」として知られる。団子石を展示している双葉歴史民俗資料館によると、団子石は火口内で、マグマで結晶化した輝石や磁鉄鉱などが凝灰岩や安山岩の破片に付着。これに、ナトリウム、カルシウムなどケイ酸質の土壌が付いて形成されたといわれ、茅ケ岳山麓の標高1000m前後のローム(火山灰)層下部で産出。甲斐ヒルズカントリー倶楽部(同市)周辺では今でも見つかるといい、18番ホール近くには「団子石の碑」(高さ88cm、幅168cm)が建っている。
また同市と韮崎市の境にあるホッチ峠などでは、かつては団子石よりも一回り大きい「饅頭(まんじゅう)石」が産出されたという。
民話では、弘法大師が修行をしながら旅をしていた時、茅ケ岳の麓を通ると、山中で老婆が団子を売っていた。長旅で空腹だった大師は「団子を恵んでください」と老婆に布施を求めたが、欲張りな老婆は「この団子は石なので食べられません」と断った。
大師は老婆の強欲を哀れみ、心根を正すために経を唱えると、団子は本当の石に変わってしまったという。今も村奥の山中からは「団子石」が見つかり、村人はこの石がたくさん出る集落を「団子」と呼んだという。(県連合婦人会編「ふるさとやまなしの民話」)
「双葉町誌」によると、団子新居村の前身は団子村。1617(元和3)年、現在地より約2km東の高所から移転し、新たな集落を意味する「新居」を付け、団子新居村になったという。
1875(明治8)年に同村は竜地、大垈(おおぬた)、菖蒲沢(しょうぶざわ)の3村と合併し登美村に、1955年には塩崎村と合併し双葉町に、さらに2004年には竜王、敷島両町と合併し甲斐市になった。双葉町は消滅したが、大字に団子新居が残った。
同市生涯学習文化課は「〝団子〟新居の由来を知らない子供も多い。学校教育で地域の歴史を知るサポートをしていきたい」と話した。
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